一方、インフルエンサーや発信者の側へのメッセージも明確です。

フィットネスに限らず、もしあなたが恵まれたルックスや才能を持っていたとしても、ただそれを誇示するだけでは人々の心は動かせないかもしれません。

しかし伝え方次第でその問題を乗り越えることができると本研究は示しています。

「美の逆効果」は決して「美人は絶対に損をする」という意味ではなく、「美人で得をしていた人ほど、謙虚さを忘れると痛い目を見る」という戒めと言えるでしょう。

研究チームは、謙虚な自己表現を使うことで美しさによる逆効果を和らげられると明らかにしました。

実際、本研究では完璧な見た目のインフルエンサーでも謙虚な姿勢を示すことで、親近感の差がほぼなくなり、フォロワーからの反応の低下も抑えられたのです。

言い換えれば、フォロワーとの心理的な距離を縮めるためには、「見た目の完璧さ」よりも「人間味や共感」を示す戦略が有効だということです。

「美の逆効果」を防ぐ鍵は、「謙虚さ」や「ありのままの姿」にあると言えるでしょう。

ただし、この研究にも留意すべき点はあります。

実験ではアメリカの成人男女が主な対象であり、全ての文化圏で同じ結果になるとは限りません。

例えば日本や他の国では結果が異なる可能性があります。

また、SNSを見る側の性別や年齢、元々持っている自己評価や自信によっても、反応が変わることがあるでしょう。

実際、研究チームが行った別の実験では、極端に魅力的な女性インフルエンサーが特に厳しく評価される傾向が示され、男性インフルエンサーの場合は女性ほど強い影響が出ないことも確認されています。

このように、人々が「美しさ」にどう反応するかはさまざまな要因で変化するため、今後さらに詳しい研究が求められます。

それでも、本研究の示すメッセージはSNS社会において重要な教訓を与えてくれます。

誰もがフィルターや加工で「より美しく、完璧に」と見せたくなるSNSだからこそ、完璧すぎる見た目には思わぬ落とし穴があることを心得るべきでしょう。