しかし同時に、SNS利用者の間では「自分と似ている身近な存在」に共感しやすいという新たな傾向も指摘されています。

親近感を覚える相手の発信には心を動かされやすく、逆にあまりに完璧すぎる人には圧倒されて距離を感じてしまうこともあります。

特にフィットネスの世界では、美しく鍛え抜かれた身体は憧れの的になる一方で、「自分とは違いすぎて無理…」とフォロワーに思わせてしまう危険もあります。

たとえば、あなたがスポーツや勉強をするとき、すぐ近くにいる「少しだけ上手な先輩」を見ていると、「自分も同じようになりたい!」と勇気が湧いてきませんか?

よくある子供時代の話で「クラスの足の速い子に勝つために走る練習をする」というものがありますが、これも少し上の存在に直接的に触発されて頑張っている典型です。

一方で、オリンピック選手の競技を見て「自分も同じようになりたい!」と思う人はあまりいないでしょう。

あまりにも遠い存在を見ても「すごいけど自分には絶対無理だ」と感じてしまい、逆にやる気を失ってしまうかもしれません。

少なくとも子供にとって走り込みの練習をする動機としては「クラスのライバル>オリンピック選手」であるはずです。

心理学の世界でも、このように「自分のレベルから少しだけ上の人」を目標にすると、やる気が出やすいことがわかっています。

このことを難しい言葉で「最近接発達領域」といいますが、つまり「頑張れば届く距離に目標を置くのが効果的だ」ということです。

フィットネス系のSNSでも、遠すぎる完璧な存在ではなく、「頑張れば近づけそうな存在」が求められている可能性があります。

こうした背景から、米国の研究チームはフィットネス系インフルエンサーの外見の魅力度が、フォロワーにどのような影響を与えるかを詳しく調べました。

特に、「極端に魅力的な見た目」がフォロワーの親近感や反応(いいね・フォローなど)にどんな影響を与えるか、もしネガティブな影響があるならどのように和らげられるのかを検証することが目的でした。

美しさが人気を下げる現象

美しさが人気を下げる現象
美しさが人気を下げる現象 / Credit:Photoshop . 川勝康弘