そのためには昆虫の体の中でも電気刺激を送りやすく、動きをうまく制御できる最適な位置を探すことが重要でした。
研究チームは様々な検討を重ねた結果、昆虫の背中側、特に前胸と中胸の節の間にある薄い膜状の部分が電極を装着するのに最適であることを発見しました。
しかし昆虫の体はとても小さく繊細なため、この電極の位置を正確に特定し、差し込む作業は従来、熟練の技術者が手作業で慎重に行っていました。
そこで研究チームは、この作業を人間ではなく機械に任せて完全に自動化できるシステムを構築することにしました。
まず、昆虫の体を特殊な器具でしっかりと固定し、動けないようにします。
次に、AIを搭載したカメラを用いて昆虫の体の画像を撮影し、最適な電極装着ポイントを画像認識技術で正確に割り出します。
そして、特注のロボットアームが、その位置に正確に電極を挿入するという仕組みです。
この電極は非常に精巧な作りになっており、3Dプリント技術を使ってABS樹脂をベースにした微小な構造をまず作り、その表面を無電解めっきという特殊な手法で薄く銅で覆った「双極電極」です。
銅は電気を効率よく流すことができるため、この小さな電極によって昆虫の体に確実に刺激を送り込むことが可能になります。
こうした精密な作業を自動化することで、人間が行う場合には熟練者でも約15分もかかっていた昆虫1匹あたりのサイボーグ化の工程をわずか1分8秒にまで短縮することに成功しました。
これは従来の手作業と比べておよそ13倍の高速化であり、さらに人間が作業すると生じる個体差や出来栄えのばらつきをなくし、常に一定の品質で量産できるというメリットも生まれました。
こうして量産されたサイボーグ昆虫がどのくらい正確に人間の思い通りに動くのかを確かめるため、研究チームは詳しい性能評価を行いました。
まず、昆虫を直線的に歩かせながら電気刺激を与えて方向を制御する試験をしました。