しかも、この作業はごく僅かな力加減の誤りで昆虫の組織を損傷させるリスクがあり、その成否や出来栄えは技術者の腕に大きく左右されました。

結果として、同じ方法で作っても昆虫の個体ごとに動きの性能にばらつきが出てしまうという問題も生じていました。

災害現場やインフラ点検といった実際の現場では、一匹や二匹のサイボーグ昆虫ではなく、数十匹から数百匹単位で同時に活動させる必要があります。

そのためには、手作業に頼る現状では到底対応が追いつかず、迅速かつ安定して品質を維持したまま大量生産できる自動化技術の開発が求められていました。

そこで研究チームは、「サイボーグ昆虫」の製造工程そのものを根本的に変革し、自動化する仕組みを構築することに挑戦しました。

人の手に依存せず、自動製造ラインでサイボーグ昆虫を大量生産できる未来は実現可能なのでしょうか?

AI×ロボットがサイボーグ昆虫を量産

サイボーグ昆虫は量産されることでその真価を発揮します
サイボーグ昆虫は量産されることでその真価を発揮します / Credit:AI活用しサイボーグ昆虫を自動生産~インフラ点検や探索活動などに応用~

サイボーグ昆虫を大量生産するにはどうしたらいいのか?

この問題を解決するため研究者たちは、AIを活用したロボットアームによる世界初の「サイボーグ昆虫」自動組立システムを開発しました。

具体的にどのようにして昆虫を「サイボーグ化」するのか、順を追って詳しく見ていきましょう。

今回の実験に選ばれたのはマダガスカルゴキブリという昆虫です。

体長が5~8センチメートルと比較的大型で、飛ぶ能力を持っていませんが、穏やかな性格で攻撃性もなく、人間に対して害が少ないため、研究用途として非常に扱いやすい昆虫です。

また寿命が2~5年と長く、丈夫な体構造を持っていることから、サイボーグ昆虫の実験に非常に適した生物として選ばれました。

昆虫をサイボーグ化するためには、体に小さな電子デバイス(電極と制御用の装置)を装着し、電気信号によって動きを制御する必要があります。