そのため、薬を飲んだことによる影響を両グループで揃えることができ、「イベルメクチンの蚊を殺す効果」だけを明確に確認できるよう工夫されたのです。

研究では特に、マラリアの感染リスクが高いとされる5歳から15歳までの子どもたちの感染状況を詳細に調べました。

薬を飲み始めてから6ヶ月間、毎月子どもたちを検査してマラリアの感染の有無を確認し、それぞれのグループでどれくらいマラリア感染に差が出るかを比べました。

その結果、イベルメクチンを飲んだグループでは、アルベンダゾールを飲んだグループに比べて感染率が26%も低くなるという結果が得られました。

これは統計的な解析によっても確認された有意な差(発生率比0.74、95%信頼区間0.58~0.95、P=0.02)であり、単なる偶然の結果ではないことがわかっています。

つまり、この差は「実際にイベルメクチンが蚊を殺したこと」によるものである可能性が非常に高いと言えます。

さらに注目すべきは、この地域の住民の多くは既に蚊帳を使っていたにもかかわらず、イベルメクチンの効果がはっきり現れたことです。

これはイベルメクチンが、蚊帳で防ぎきれない屋外や昼間などの環境にいる蚊にも有効に作用したためと考えられます。

薬を効率よく配布できた地域ほど効果が高くなる傾向が見られたことも、この薬が広く実用化された場合の効果を予測する上で重要なポイントです。

一方、安全性についても慎重に検討されました。

薬を何万人もの人に配る場合には、予期しない副作用や健康被害が起きないかを厳密に調べる必要があります。

今回の試験では、イベルメクチンが半年間にわたり延べ5万6000回以上も投与されました。

その結果、深刻な副作用は一度も確認されませんでした。

一方で、軽度の副作用(頭痛やめまいなどの一時的な体調不良)の報告はありました。

その報告頻度はイベルメクチン群で投与100回あたり約6.2件、対照群では約3.8件と差があり、この差は統計的に意味のある増加(発生率比1.65、95%信頼区間1.17~2.34、P=0.005)でした。