つまりこの薬を配ることで、蚊以外の厄介な害虫もまとめて退治できる「一石二鳥以上」の効果が期待できるのです。

もともとイベルメクチン自体、寄生虫病の特効薬として「人類の病」を長年減らしてきた薬ですが、それが今度は「人類の天敵」である蚊をも倒せる武器になるかもしれないというのは、科学の妙と言えるでしょう。

さらなる課題としては、効果を最大化する投薬戦略(どの頻度でどの期間投与すべきか)や、蚊が将来的に耐性を持たないようにする工夫などが考えられます。

しかし研究チームは既に次の展望も描いています。例えば今回のケニアの試験では5~15歳児にフォーカスしましたが、今後はより幼い子どもや妊婦への投与、安全性も含め検討する必要があります。

また2022年にはモザンビークでも同様の試験が行われましたが、現地のサイクロン災害やコレラ流行で中断を余儀なくされ、大きな成果は得られませんでした。

この経験から、地域住民の理解と協力を得る重要性や、安定した医療インフラの必要性といった課題も浮き彫りになっています。

それでも「蚊を殺す薬」を使った新たな対策が示したポテンシャルは大きく、専門家はその将来性に期待を寄せています。

研究統括者のレジーナ・ラビノビッチ氏(ISGlobalマラリア根絶イニシアティブ部門長)は「この研究は、既存の手段が効きにくくなっている地域でマラリア予防の未来を切り拓く可能性があります。安全性と効果が今回の大規模試験によって実証された薬剤を使い、他の蚊対策と組み合わせることで、マラリア制圧の効果を高められる点で画期的です」と述べています。

飲むだけで蚊を寄せ付けないどころか殺してしまう――そんな夢のような「飲む蚊取り線香」が、将来マラリアから世界中の人々を守る切り札となるかもしれません。

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元論文

Ivermectin to Control Malaria — A Cluster-Randomized Trial
http://dx.doi.org/10.1056/NEJMoa2411262