1988年以降、製薬会社の無償提供プログラムを通じて世界中で累計46億回以上も投与されており、その安全性と信頼性はすでに高く評価されていました。
また近年、この薬には蚊を殺す効果もあることが科学的に確認されていました。
人がイベルメクチンを飲むと血液中に薬剤が残り、それを吸血した蚊が死んでしまうという仕組みです。
これまでの研究では、薬剤が蚊を殺せること自体は確かめられていましたが、大規模に人間に投与した場合に、本当にマラリア感染を減らす効果が得られるのか、そして健康への悪影響がないかについては十分に検証されていませんでした。
そこで研究チームは、実際に多くの人々に薬を投与することで、この薬が本当にマラリア感染を有意に減らし、安全に使えるかどうかを調べることにしたのです。
しかし、実際に人間に薬を飲ませる実験をするときには、多くのことを考えなくてはなりません。
例えば、「薬を飲む」という行為自体が、何らかの体調変化を起こす可能性があります。
もし比較のための対照群が「何の薬も飲まない」状態だと、結果の違いが「薬を飲むこと自体の影響」なのか、「イベルメクチンという薬特有の効果」なのかがわからなくなってしまいます。
そこで研究チームは、比較対象として「アルベンダゾール」という寄生虫駆除薬を使いました。
アルベンダゾールは、イベルメクチンと同じく寄生虫駆除に効果がありますが、蚊に対する効果はありません。
こうすることで、「薬を飲んだ」という条件を揃えた上で、「イベルメクチンに特有の蚊への効果」を明確に比較できるように工夫したのです。
こうして大規模な試験がケニアで行われることになりましたが、このような方法で本当にマラリア感染を効果的に抑えることができるのでしょうか?
また、多くの人々に薬を配ることによって、安全性や健康への悪影響など、思わぬ問題が起こったりはしないのでしょうか?
そしてその効果は従来の方法を超えるほどのものでしょうか?
人間の血を「飲む蚊取り線香」状態にする薬
