特にサハラ以南のアフリカでは、5歳未満の子どもたちが多く犠牲になっています。

マラリアを防ぐために重要なのは、蚊を人間に近づけないこと、蚊に刺されないことです。

そこで、これまで世界が取り組んできた主な対策は、殺虫剤を染み込ませた「蚊帳(かや)」や、家屋の壁に殺虫剤を吹き付ける方法でした。

こうした対策は非常に効果があり、2000年から2015年の15年間でアフリカのマラリア患者数を約81%も減少させる成果を上げました。

しかし、こうした方法には大きな落とし穴がありました。

近年、蚊が殺虫剤に対して「耐性」を持つようになったのです。

耐性とは、殺虫剤を使い続けるうちに蚊が薬に慣れてしまい、薬が効かなくなってしまうことを指します。

さらに蚊は、人間が蚊帳の中に入る夜間以外の「夕方や早朝」に活動したり、蚊帳の外にいる人を狙って「屋外」で刺したりといった新たな行動をとるようになりました。

これらの行動変化によって、今までのような殺虫剤や蚊帳だけでは、もはやマラリアを完全には防げなくなってしまったのです。

このように対策が頭打ちになってしまったため、新しい発想の方法が世界中で求められるようになってきました。

そこで科学者たちが注目したのが、「人間自身が蚊を退治する力を持つ」方法でした。

具体的には、人が薬を飲むと、その人の血が蚊にとっての毒になる仕組みです。

これは一見斬新な発想に見えますが、実は家畜やペットの世界では昔から行われている方法でした。

家畜に寄生虫駆除薬を投与すると、その薬が血液に残り、動物の血を吸った害虫を退治できることが知られていたのです。

この発想を人間に応用できる可能性がある薬として、科学者が注目したのが「イベルメクチン」です。

イベルメクチンは1970年代に日本の大村智博士が発見した薬で、オンコセルカ症(別名:河川盲目症)やリンパ系フィラリア症といった熱帯病の特効薬として知られています。