だからこそ、熱中症を予防するには「のどの渇きを感じる前に」計画的に水分を補給することが重要になります。

汗は“血液から作られる”冷却システム

暑い環境に置かれると、私たちの体はまず体温を一定に保とうと働きはじめます。このとき体内では「補償反応」と呼ばれる仕組みが動いています。

皮膚の表面から熱を逃がすために、体は心拍数を上げて血液を皮膚へ多く送り込みます。さらに汗腺という組織から「汗」を出すことで、蒸発によって体を冷やします。

この汗は、血液から取り出された水分や塩分などの成分でできており、血液量が減ると汗の量も減ってしまいます。つまり、汗をかくということは、体内の水分と塩分を同時に失っていくということなのです。

この段階ではまだ体は自力で体温を調整できていますが、水分補給や涼しい環境への移動ができなければ、いずれ体は限界に達してしまいます。

熱中症のとき体で何が起きているのか?

汗は“血液から作られる”冷却システム

私たちの体は、外が暑くても中の温度(体温)を一定に保つよう、いくつもの工夫をしています。このように、体が外の環境変化にうまく対応しようとする反応のことを「補償反応(compensatory response)」と呼びます。

熱中症の初期には、この補償反応が体内でフル稼働します。

たとえば、体温が上がってくると、まず心臓が強く速く動くようになり、血液を皮膚の表面にたくさん送るようになります

体の中では、熱が筋肉や内臓の活動によってどんどん生まれています。これを逃がさずにいると、体温は上がり続けてしまいます。このとき血液が、“体深部の熱を運ぶ配送車”のような役割をして、熱を皮膚の表面まで運び空気との間で熱交換します。こうして皮膚から外気に向かって体温が放出されていくのです。これによって、身体は体温を一定に保とうと調整します。

同時に、汗腺という組織が働いて汗を出します。汗が皮膚から蒸発するときに熱を奪うので、これも体温を下げる仕組みのひとつです。