例えば、順位の高い動物ほどテストステロンが多く、そのため攻撃的になるのではないかという仮説がありました。
実際に、この研究チームが観察したマウスでも、順位が高いマウスは精子の数が多く、テストステロンなどのホルモンと何らかの関連があることが示唆されました。
ただし、ホルモンや体格だけで順位が完全に決まるわけではありません。
つまり、「脳の中では何が起きているのか?」という点は、依然として謎のままだったのです。
そこでアメリカのハーバード大学(Harvard)を中心とした研究チームは、マウスを使って、この順位を決定する脳の仕組みを詳しく調べることにしました。
この研究では、数匹のオスマウスをグループにして飼育し、一定期間の間、順位を決めるための実験を行いました。
まず、実験を開始する前にマウスをそれぞれ別々に飼育します。
次に、「なわばり争いテスト」という実験で、他のマウスの縄張り(巣箱)に侵入させて対戦させます。
その後、「チューブ試験」と呼ばれる別の実験を行います。
チューブ試験では、細い透明なチューブの両端から2匹のマウスを同時に入れます。
この2匹はチューブの真ん中で正面から押し合いをして、先にチューブから出てしまった方が負けになります。
これらのテストを段階的に行い、最終的にどのマウスが強くて、どのマウスが弱いかを調べました。
実験の結果、非常に興味深いことが分かりました。
これまで多くの人が考えていたように、順位は「強いマウスが積極的に攻撃することで決まる」わけではなかったのです。
実際には、順位が低い方のマウスが「怖がって逃げる」など、防御的な態度を取ることによって勝敗が決まることが多かったのです。
具体的には、中間くらいの強さのマウスは、自分より強い相手に対すると防御的になり、すぐに怖じ気づいてしまいます。
一方で、自分より弱い相手には積極的に攻め込んでいきます。