つまり、ポンプ光のOAM量子数 l_p が、信号光 l_s とアイドラ光 l_i の和に等しくなる、という保存則です。

OAM演算子は次のように定義されます。

L_OAM = ħ Σ_j Σ_{p,l} l · n_{p,l}

ここで n_{p,l} は「そのモードにいる光子の数」を表す演算子です。このOAM演算子とハミルトニアンの交換関係を調べると、

[L_OAM, H] = 0

となり、OAMが保存されることが理論的に保証されます。重要なのは、これは期待値(平均値)だけでなく分散(ゆらぎ)に対しても成立する点です。

実験では2段のSPDCを組み合わせました。第1段のSPDCでは、波長524 nmの連続波レーザーを入力し、783 nmと1588 nmの非縮退光子ペアを生成しました。1588 nm光子は「到来通知」(ハーラルド)に使い、783 nm光子を第2段SPDCのポンプとしました。このポンプ光には空間光変調器(SLM)で渦位相を与え、l_p = 0, -1, +2 などのOAMを持たせました。第2段のSPDCではリチウムニオベート結晶を用いて1534 nmと1600 nmのペアを生成し、それぞれのOAMを測定しました。

結果として、l_p = 0 の単一光子ポンプでは、168時間の測定で57ペアが得られ、その約76%が「l_s = -l_i」という保存則に従うことが確認されました。また、l_p = -1 の場合には (l_s, l_i) = (0, -1) または (-1, 0) のみが観測され、l_p = +2 の場合には (1, 1) のみが観測されました。これらはいずれも保存則 l_p = l_s + l_i を満たしています。さらに、同じ装置で弱いコヒーレント光(古典的なレーザー光)を使った場合と比較しても、相関分布はほぼ完全に一致し(相関係数は99%以上)、単一光子とレーザー光の違いによる差は見られませんでした。

ただし、実験は非常に効率が低く、単一光子ポンプでの成功率は1時間あたりおよそ1回程度という「干し草の山から針を探す」ような難しさを伴いました。また、生成された光子ペアに量子もつれの兆候は見られましたが、統計的に有意な証明には至っていません。