こうして「1 + (−1) = 0」という角運動量保存の式が、単一光子の変換という極限状況でも保存則に従うことが実験的に確認されました(ただし、実験には誤差も含まれます)。

特に、ねじれが0の場合(lp=0)では、168時間にわたる測定で観測されたイベントの約76%が、2つの光子のねじれの合計が元の光子のねじれと一致しました。

主著者のレア・コップ博士(Lea Kopf)は「私たちの実験は、単一光子レベルでも軌道角運動量が確実に保存されることを示しています。これはプロセスの対称性に基づく重要な自然法則が、最も基本的なレベルでも成り立つことを確認したものです」と述べています。

言い換えれば、とても起こりにくい現象を、研究陣の根気と工夫によってついに実証したのです。

「保存則」の先にある可能性

この研究の成果は、単なる理論の証明にとどまりません。

実験の途中で、研究チームは新しく生まれた二つの光子が「量子もつれ(エンタングルメント)」と呼ばれる不思議なつながりを持つ「兆候」を確認しました。

量子もつれとは、二つ以上の粒子が離れていても互いに影響を与え合う特殊な関係のことで、この研究では空間や時間、さらに偏光(光の揺れの向き)など複数の性質が絡み合った複雑な状態が生まれた可能性があります。

こうした量子もつれは、量子コンピューター(量子力学を利用した新型コンピューター)の計算能力を大幅に高めたり、量子通信(量子力学を応用した安全で高速な通信)で一度に送れる情報量を増やしたりする鍵になると考えられています。

そのため、この実験は将来の量子技術に向けた大きな一歩と言えるでしょう。

研究チームは今後、光子が生まれる現象の効率をさらに高めるとともに、生成された量子状態を簡単に調べる技術の開発にも取り組む計画です。

これらの技術が実用化されれば、現在は「干し草の山から針を探す」ほど稀な光子の検出が、より容易になると期待されます。