このような実験では、強力なレーザー光(無数の光子の集まり)が使われ、2つの光子のペアが作られる際に光全体の軌道角運動量が保存されることは以前から確認されていました。
ただし、これらのレーザー光は多数の光子を含むため、ひとつひとつの光子に関して細かく調べることが難しく、ねじれの保存が「平均として」しか分かりませんでした。
つまり、「多くの光子がいるときの平均的な結果」としての保存しか確認できなかったのです。
そこで今回、フィンランドのタンペレ大学を中心に、ドイツやインドの研究者が参加した国際チームが、これまで誰も行っていなかった実験に挑みました。
目的は、単一の光子が消滅して新たに2個の光子が生まれるときでも軌道角運動量が保存されるかどうかを確かめることです。
例えば、最初の光子が全くねじれを持っていない場合、新たに生まれた2つの光子のねじれの合計は必ずゼロになるはずです。
もし片方がプラス(+1)のねじれを持ったら、もう片方はマイナス(−1)のねじれを持ち、ちょうど「1 + (−1) = 0」が成り立つはずなのです。
これはイメージとして、左右逆方向に回転する2つのコマを同時に回したら、その回転がちょうど打ち消し合って全体では回転しないのと同じです。
このような理論は昔から知られていましたが、実際に光子1個ずつのレベルで検証した研究は今までありませんでした。
今回の研究チームはまさにこの難しい課題に初めて挑んだのです。
しかし、この実験は非常に難易度が高いものでした。
というのも、単一光子が非線形現象によって光子ペアに変換される確率は非常に低く、「干し草の山から針を探す」ような難しい作業でした。
そこで研究チームは、光学装置を極限まで安定させ、背景の雑音光を抑え、検出器の効率を最大限に高めるなどあらゆる工夫を凝らしました。
さらに長期間にわたって根気強くデータを集めた結果、十分な数の「光子の変換」イベントを捉えることに成功したのです。