光の波の形が渦巻き状になることで「ねじれ」が生じ、さらにそのねじれの向きは数値で表現されます。

この値がプラスのときとマイナスのときでねじれの方向が逆になり、値がゼロの場合にはねじれがない状態を意味します。

さらに、この光のねじれ(軌道角運動量)にも保存則があり、光が物質と相互作用するときに全体の軌道角運動量の総量は一定であると考えられています。

例えば、光が物質の中で特別な相互作用(非線形光学現象)を起こすとき、高エネルギーの光子1つが消滅し、より低エネルギーの光子2つに変わる場合があります。

コラム:単一光子の分割とは?

「単一光子の2分割」と聞くと、ひとつの光の粒が包丁でスパッと二つに割れて、半分ずつの光になるようなイメージを持ちがちですが、実際に起きているのはそれとは違います。今回の研究では特殊な結晶で起きる反応(パラメトリック下方変換)によって、高いエネルギーの1個の光子が、晶中の原子の電場と一瞬だけ相互作用して消滅し、その代わりにエネルギーを分け合う2つの新しい光子が 生成 されるという手法が使われています。この現象は物理学でいう「エネルギーの変換現象」の一種です。光子とは光の粒のことですが、粒とはいえ普段目にするビー玉や砂粒のような固体の粒ではありません。光子はエネルギーの小さなかたまりであり、そのエネルギーの量によって、目に見える光(可視光)や見えない光(紫外線、赤外線など)に区別されます。「パラメトリック下方変換」では、高いエネルギーを持った1個の光子が結晶の中に入ります。結晶の中では、光子が結晶の原子が作り出す電場(目に見えない力の場)とほんの一瞬だけ相互作用します。その結果、もとの光子はその場で「消滅」し、そのエネルギーを使って新しく2つの光子が「生成」されます。つまり、最初の光子は切断されたのではなく、「消えて」そのエネルギーが2つに分けられ、新しく別々の光子として生まれ直したのです。この変化の重要なポイントは、エネルギーの合計が前と後で変わらないということです。例えば、100円玉が1枚あって、それを50円玉2枚に両替するイメージを持ってみてください。お金の枚数は増えましたが、合計の金額(エネルギー)は変わりません。同様に、この光の変換でも「エネルギーというお金」がぴったり合うため、1つの光子が2つの光子に変わっても物理的なルールにはまったく問題がありません。さらに、この新しく生まれた2つの光子には、もとの光子が持っていた「ねじれ」(軌道角運動量:OAM)と呼ばれる回転のような性質もきちんと引き継がれます。片方の光子がプラスのねじれを持つ場合は、もう片方がマイナスのねじれを持ち、その合計は最初の光子と同じになります。こうして、単にエネルギーだけではなく、もとの光子の持っていた性質までも正確に受け継がれるのです。