定言命法で理念を絶対に守ると、こうした組織存続の危機に直面することがあります。

つまり定言命法のもう一つの限界は「例外を認めない硬直性」です。

では現実的に、ビジネスではどう考えればいいのでしょうか?

①まず定言命法は、基本的な考え方や理念が健全か否かを考える上でとても役にたちます。たとえば、その考え方が、社外でも共有できるかという視点で考えると、骨太な理念に育っていきます。

②ここで考えるべきは、「組織にいる一人一人のメンバーに、どのように行動して欲しいか」ということ。もともと定言命法は「個人の主観的な行動原理(自分ルール)で、普天的な善悪を判断しよう」という考え方です。

平野洋一郎さんが創業したアステリアの理念は「発想と挑戦」「世界的視野」「幸せの連鎖」です。

平野さんが主宰する早朝勉強会「経営730」で平野さんにお話しを伺ったところ、「組織にいる人たち一人一人がどう行動して欲しいか。さらに世の中にどのように貢献すればいいかを考えて、この理念を作った」とおっしゃっていました。

アステリアの理念は、まさに定言命法的に作られています。

③一方で定言命法を誤用すると、間違った方向で組織が一直線に進み、最後には破綻するリスクもあります。そこで多様な視点で、批判したり再検証できる仕組みが必要になります。

④硬直性も、定言命法の弱点です。過度に頑なにせずに、環境変化の応じて柔軟に、例外もある程度許すことも必要です。

③と④については、会社組織の場合、社外取締役によるガバナンスを効かせることも一つの方法です。

カント哲学というと「お堅い哲学」の代表ですが、現在のビジネスでも大いに役立つのです。

編集部より:この記事はマーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏のオフィシャルサイト(2025年8月19日のエントリー)より転載させていただきました。永井孝尚氏のメルマガのご登録はこちらから。