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以前、永井経営塾のゲストライブで『獺祭』の桜井博志会長と対談した時のお話です。
獺祭は「お客様においしい酒を届ける」と考えています。
「儲けるため」とか「会社のため」といった条件は、一切抜きです。
獺祭は「お客様においしい酒を届ける」ために、常識外れの挑戦を数々行っています。
杜氏に頼らない酒造り
獺祭は「お客様においしい酒を届ける」ために、純米吟醸に徹底してこだわりました。そしてこだわりすぎた結果、杜氏が反発して、全員辞めてしまいました。
普通だったら、日本酒造りができなくなるのでここで妥協するところです。しかし「お客様においしい酒を届ける」ことに徹底してこだわった獺祭は、杜氏に頼らずに、自分たちで徹底してデータを取り、発酵室を常時5度で維持するなどの工夫をして、おいしいお酒が作れるようになりました。
さらに杜氏の「冬に仕込む」という常識も見直した結果、通年で美味しい酒が作れるようになりました。
酒屋への直売
こうして獺祭は人気で品薄になりました。すると転売ヤーが登場して獺祭を買い占め、価格が高騰するようになりました。これでは獺祭が目指す「お客様においしい酒を届ける」ことができません。
それまで日本酒業界では、酒屋(小売店)には問屋経由で卸すのが常識でした。そこで獺祭は問屋に「仕入れを増やして欲しい」とお願いしましたが、問屋は「他の日本酒もあるし平等にしなければいけないからダメ」と言って仕入れを増やしません。
そこで獺祭は、日本酒業界では常識外れとなる「酒屋への直販」を開始しました。
獺祭はひたすら「お客様においしい酒を届ける」ために、こうした挑戦を次々と行いました。
桜井博志会長の社長就任時は1984年。社長退任までの2016年で、日本酒業界の市場規模は1/4に縮小しました。しかしこの間に、獺祭は売上100倍以上に成長したのです。
獺祭は次々と障害にぶつかりましたが、無条件で「お客様においしい酒を届ける」を首尾一貫して徹底した結果、市場が大きく縮小する逆風の中、長期的な信頼やブランド力を確立したのです。