さらにこの研究には、吸盤でザトウクジラにカメラを取り付けて撮影した映像も含まれていました。その映像からは、海面からは見えないイルカとクジラの接近や接触、水中での並走といった詳細な様子が記録されていました。

こうして集まった記録は、世界17か国で425頭のクジラとおよそ1,570頭のイルカに及びました。研究チームは、これらの行動がたまたま一緒にいただけなのか、それとも種を超えた遊びや交流の証拠なのかを見極めるため、詳細な分析を行ったのです。

世界17か国から集まった“海の社交場”の証拠

分析の結果、199件の異種間交流イベントが確認されました。

観察されたクジラは約7割がザトウクジラで、イルカはバンドウイルカが最も多く、次いでカマイルカやハラジロカマイルカが続きました。

行動の中で最も目立ったのは、イルカがクジラの頭部付近に集まり、波に乗って進む「バウライディング」です。

全体の約8割の事例でこの位置取りが見られ、イルカはクジラの頭の前で、水の流れに押されるように進んでいました。

また、イルカがクジラの横に並んで泳ぐ「並走」や、水面でのジャンプ、ゆったりとした蛇行泳ぎも多く記録されました。一方で、尾ビレで水面を叩くなどの攻撃的な行動は、全体の5%ほどしか観察されませんでした。

Credit: Meynecke et al., Discover Animals (2025)

クジラ側も無関心ではありませんでした。

特にザトウクジラでは、体を回転させるローリングや腹見せ、胸ビレをイルカの方に向ける動きなどが見られ、これは友好的あるいは社交的なサインと解釈できると研究者は述べています。

さらに全体の約3分の1の事例では、ザトウクジラがイルカに向かってゆっくり接近したり、同じ方向へ並んで進んだりする「ポジティブな反応」が確認されました。中にはイルカをそっと押し上げるように水面へ持ち上げる珍しい行動もあり、研究チームはこれを「遊び」や「世話行動」の可能性があると述べています。