これは意思決定のスタイルにも影響を与えます。心理学では、情報を集めて計画的に比較検討するシステマティック思考と、直感や感情に基づいて素早く判断するヒューリスティック思考という2つの傾向があるとされます。
システマティック思考の人は、購入や投資といった行動を「今使うべきか、それとも将来に回すべきか」という長期的視点で判断します。対してヒューリスティック思考の人は、瞬間的な感情や直感を重視し、「今この瞬間が楽しいかどうか」を優先する傾向があります。
このヒューリスティック思考と結びつきやすいのが、FOMO(Fear of Missing Out:機会損失の恐れ)です。
FOMOとは、「この機会を逃したら二度と手に入らないかもしれない」「今参加しないと取り残されてしまう」という感覚で、希少性を強調する演出や期間限定キャンペーンなどが典型的な引き金になります。この心理が働くと、人は冷静な比較検討をする前に「今行動しなければ」という衝動が強まり、瞬間的な支出を決断しやすくなります。
こうして見るとマテリアリズム傾向が高い人やヒューリスティック思考を持つ人には、ネガティブな印象を受けてしまいますが、何もこの傾向が悪いというわけでもありません。
マテリアリズム傾向が高い人は、長期的に貯蓄を目指す人よりも明確な消費目的を持つため、自身の気分を盛り上げたり仕事のモチベーションを維持しやすく、またヒューリスティック思考は意思決定が速く機会を逃しにくいというポジティブな要素があります。
逆にマテリアリズム傾向が低い人や、システマティック思考の人は、慎重な分、即断即決が求められる場面では意思決定が遅くなり、チャンスや楽しみを逃す可能性があります。また、変化への対応や気分の切り替えが遅れるため、環境の変化が激しい状況に対処しづらいというネガティブな側面もあります。
そのためどちらがいい、悪いということではありません。