最後に、CWGは、SCCを否定しつつも、規制を実施するにあたっては、費用便益分析をクリアすることの重要性を説いている。

SCCは幾らでも値が変わり得るので政策立案者にとっては使い物にならないという主張はますます強まっています。ケンブリッジ・エコノメトリクス(Thoung, 2017)は、SCCは不確実性が大きいため「廃止すべき」と述べています。イギリスとEUはもはや政策評価にSCCを使用することはせず、「目標と整合した」炭素価格の設定を採用しています(イギリスエネルギー安全保障・ネットゼロ省 2022、Dunne 2017)。しかしながら、SCCの推定が不確実だからと言って、他の規制手段が本質的に優れていたり効率的であるということは意味しません。他の排出規制(電気自動車の義務化、再生可能エネルギーの義務化、エネルギー効率規制、特定の家電製品の禁止など)は、主流のSCC推定値と比べてもトン当たりの削減コストがはるかに高く、費用便益分析をクリアしていないことは明らかです。

なおSCCについては筆者も記事を書いてきたので詳しくはリンクを参照されたい。

・米国の気候作業部会報告を読む①:エネルギー長官と著者による序文 ・米国の気候作業部会報告を読む②:地球緑色化(グローバル・グリーニング) ・米国の気候作業部会報告を読む③:海洋酸性化…ではなく海洋中性化 ・米国の気候作業部会報告を読む④:人間は気候変動の原因なのか ・米国の気候作業部会報告を読む⑤:CO2はどのぐらい地球温暖化に効くのか ・米国の気候作業部会報告を読む⑥:気候モデルは過去の再現も出来ない ・米国の気候作業部会報告を読む⑦:災害の激甚化など起きていない ・米国の気候作業部会報告を読む⑧:海面上昇は加速していない ・米国の気候作業部会報告を読む⑨:それは本当にCO2のせいですか ・米国の気候作業部会報告を読む⑩:CO2で食料生産は大幅アップ ・米国の気候作業部会報告を読む⑪:災害のリスクは減り続けている