SCCの推計について、なぜこんなにCWGが重視するかというと、米国では政府が環境規制をする場合には費用便益分析を実施する義務があり、CO2に関する規制もその例外ではないからである。

そして、このSCCの数値は徐々に引き上げられて、バイデン政権のときにはトンCO2あたり190ドルに達し、これがCO2に関する規制強化の根拠とされてきた。これに対して、トランプ政権は、SCCの推計には不確実性が高く誤解を招くとして、大統領令でSCCの使用を廃止するに至っている。

以上の一連のSCCの利用に関する米国内の経緯についてはChatGPT(チャッピー)にまとめてもらったのでリンクを参照されたい(なおいつものことだがチャッピーは民主党寄りなのでその点には注意されたい)。

SCCの推計に不確実性が極めて大きいことについて、CWGは詳しく論じている。そもそもCO2排出によって本当に被害があるのか、どの程度あるのかということも極めて不確かであることはこの連載でも述べてきた。

CO2の施肥効果など便益もきちんと評価すべきだが、算入されていない場合が多い。CO2を減らすためにどのぐらいの費用がかかるかと言う点も極めて不確かだ。それに、そもそも遠い将来における気候変動による被害を、現時点のCO2削減費用と比べる時に、どのぐらいの割引率(金利)で評価すればよいのかといった問題もある。

こういったことを検討すると、SCCの推計値はおそらくきわめて低いないしは負であるが、いずれにせよ任意性・不確実性が大きすぎるので、規制や税などの政策の指針にするには足らない、というのがCWGの結論である。

そしてまた、CWGは、「不可逆かつ急激な変化が起きる」という「ティッピング・ポイント(転換点)」の仮説を採用したとしても、高いSCCは正当化できないとしている。

自然の気候プロセスと関連する未知の分岐臨界点が存在する可能性がありますが、この可能性はSCCに関する具体的な指針にはつながりません。また、温暖化に対する気候システムの急激な変化点の可能性は存在しますが、IPCCはほとんどのもの、特に最大のものを含む大多数に低い確率を付与しています。これらの要因を考慮しても、21世紀のSCC値の増加は僅かです。