たとえば、この薬の効果がどれくらい長く続くのかや、どれくらいの頻度で投与すればよいのかは、今後さらに詳しい検証が必要です。
また、今回のマウス実験では肺のウイルス増殖は大きく減らせましたが、厳しい条件下では生存率の改善までは確認されていません。
こうした課題を乗り越えるためには、投与タイミングや量の調整、最小限の遺伝子組み合わせを見極める研究、そして体の中で薬を確実に届けるデリバリー技術の改良が必要になります。
研究チームもこうした技術面の進化に向けて今後の開発を進めていく予定です。
今回の成果は、「未知のウイルスにどう備えるか」という世界共通の課題に対し、新しい道筋を示したといえます。
もしこのmRNA薬が実用化されれば、ウイルスの流行が始まったばかりの段階で、ワクチンや特効薬ができるまでの“つなぎ”として人々を一時的に守る方法になるかもしれません。
実際の使い方については今後の臨床研究や追加データが必要ですが、「体の中に広域防衛チームを一時的に派遣する」という発想は、将来のパンデミック対策にとって非常に有望な手段になり得ます。
そして、この防御戦略の有効性と安全性が今後の研究によってより明確になっていくことが大きく期待されています。
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元論文
An mRNA-based broad-spectrum antiviral inspired by ISG15 deficiency protects against viral infections in vitro and in vivo
https://doi.org/10.1126/scitranslmed.adx5758
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。