「2月に始まったDOGE由来の政府雇用減少トレンドが終わった」ようには見えるから「DOGE雇用減速ストーリー」のご進講は書きづらくなったかもしれないが、それはあくまでも機関投資家の都合にすぎないのである。2ヶ月連続で先生が上振れるわけがないので、少なくとも見かけの数字が強く出ようがないところまでは当然予習できていないといけなかった。
7月FOMCで25bp利下げを主張したウォラー理事は7/17の講演で「ADPが示す民間セクターの雇用情勢の方が重要」「NFPは過大評価されがちである」の2点を挙げながら「労働市場は瀬戸際にある」と主張した。このように一部の理事にとって労働市場の脆弱さは既に見えており、それが7月FOMCで理事2名が利下げを主張して据置き決定に反対するという32年ぶりの珍事に繋がったのである。
またしても人口動態
1年前は失業率が景気後退を予言するサームルールをトリガーしたことで大騒ぎになった。その際に本ブログは「今回は違う」と論じたのだが、実際に昨年の雇用悪化は一時的であり景気後退は遠かった。
今年に関しては失業率は4.2%近辺で長らく安定している。U-6失業率で見ると理想の椅子にあり付けない人はじわじわと増えているが、失業するほどではない。
NFPが低調なのに失業率が上がらないのはなぜか。幅広く見られる解釈としては、トランプ政権に移行して以来、移民労働者供給が伸びなくなっているため、供給と需要が同時に減速したというものがある。なぜそれが今目立ち始めるのかというと、不法移民が労働許可を得るのは入国後180日以上経った後だからだという。
確かに、民間労働力人口(Civilian labor force)の中の外国生まれ労働者数は2025年春をピークに、バイデン政権の4年間では見られなかったような大幅な低下(ピーク対比で165万人減)を見せている。民間労働力人口の総数が1.7億人程度なので、1%減となる。