生物に活動において重要なタンパク質の設計図はDNAにありますが、DNAから直接タンパク質を合成できるわけではありません。

DNAの情報をRNAに転写し、その遺伝情報をリボゾームが翻訳することで、タンパク質が作られるのです。

リシンはこのリボゾームを不活性化させるため、当然タンパク質合成も停止。最終的には細胞が死んでしまいます。

リジンによって吐き気や腹痛が現れる。最悪死に至る場合も。
リジンによって吐き気や腹痛が現れる。最悪死に至る場合も。 / Credit:Canva

リシンの人体における致死量は体重1kgあたり0.03mgと言われています。

ドラマのように経口摂取した場合、6~12時間以内に、吐き気、嘔吐、腹痛などの初期症状が現れ、脱水症状や腎臓・肝臓の障害へと発展。

摂取量によっては36~72時間で死亡してしまいます。

リシンを用いた事件は現代でも生じており、アメリカでは2013年にオバマ大統領宛ての封書から検出されたり、日本でも2021年に、ある女性が職場の同僚だった男性の水筒にリシンを入れたとして逮捕されたりしています。

『007/カジノ・ロワイヤル』に登場した毒物「ジゴキシン」

ジェームズ・ボンドシリーズの映画『007/カジノ・ロワイヤル』では、カジノのポーカー勝負の場面で、悪役がジェームズ・ボンドのマティーニにジギタリス系の毒を盛ります。

ボンドは応急処置とAEDの電気ショックによって何とか息を吹き返していました。

ここに登場するジギタリスとは地中海を中心にアジアや北アフリカ、ヨーロッパに分布する植物です。

ジギタリス
ジギタリス / Credit:Kurt Stüber (Wikipedia)_ジギタリス

そしてこの葉から抽出されるジゴキシンは、心臓の収縮力を強める薬として利用されています。

心臓の筋肉(心筋)が収縮するには、心筋の細胞の中にカルシウムが入らなければいけませんが、ジゴキシンは、心筋の中のカルシウム濃度を増大させることで収縮力を強くしています。