陰キャでも、実行委員になれる
「自分は根っからの陰キャ。初対面の人に話しかけるのはとてつもないパワーがいる」と認識する中村氏だが、IVSという場が彼にとって「企画を通して、素敵な人と出会えるきっかけ」を提供してくれるという。
「普通の仕事だと関わることのない人たちと、年間を通してがっつり一緒に走れる。それだけで財産ですし、信頼や愛着が自然と生まれます」
実行委員としてIVSに関わることのメリットは、「最先端の情報がリアルタイムで入る」ことだと中村氏は語る。どのような技術や市場に人材や資金が集まっているのか、有望な投資家や大きく成長が期待される企業との接点。こうした貴重な情報が“内側”にはゴロゴロ転がっているのだ。
「Growth」という名の意味
中村氏は自身の役職に「Marketing」ではなく「Growth」と名付けた。その理由をこう語る。
「これは個人的な言葉の解釈になりますが……、『マーケティング』はより成熟した市場に対して用いる言葉だと感じています。カンファレンスを『市場』として捉えた場合、IVSは、まったくPMF(Product Market Fit)していないプロダクトです。こうした未成熟な市場では、既存の手法より実験と学習を重視する『Growth』という言葉のほうが適していると考えています」
実際、限られた予算の中でOKRを設定し、可能な限りデータドリブンな施策で事業成長を実現する戦略的な立ち位置にあることも、「Growth」と名付けた理由だという。
チケット販売が、直前で急激に伸びる傾向があることから、それまでの施策や、SNS上での波の作り方にも注力した。
海外カンファレンスのように、参加者が事前にスケジュールを組んだ状態で参加できるよう、年間のタイムラインを見直したいと中村氏は展望を語る。
「目的を明確に持って来てください」

最後に、これからのIVSに向けて中村氏はこうメッセージを送る。
「IVSは、なんとなく盛り上がっているから社会見学的に一度、参加しようという姿勢では、何も実利は得られません。でも、目的を持って参加すれば、間違いなく人生が変わる3日間になります。自分が何を得たいのか、そこを明確にして飛び込んでほしいです。IVSにはそれをサポートする環境があります」
熱狂を仕掛ける側として、冷静に「加速装置」としての機能を捉える一方で、IVSを「人生ゲーム」と楽しんでいる中村氏。その二面性こそが、IVSを唯一無二のカンファレンスへと進化させている要因なのかもしれない。
(文=UNICORN JOURNAL編集部)