まず、実験で使われた「光学トラップ」という装置について簡単に説明します。

光学トラップとは、強いレーザー光の焦点を使って、目に見えない小さな原子を“ピンセット”のように捕まえる仕組みです。

このレーザーピンセットを平面上に何千個も並べておくことで、それぞれのトラップの中に一つずつ原子を入れることができます。

ただし、原子は自分の意志で動くわけではなく、どのトラップに入るかは完全にランダムです。

たとえば100個のトラップを用意しても、運が良くても65個程度しか原子が入らないことが多いのです。

つまり、たくさんトラップを用意しても、そのままでは「ところどころ穴があいた」不完全な配列しかできません。

そこで、次に必要なのは「空いている場所に原子をきちんと並び直す」作業です。

ここで活躍するのが高感度カメラとコンピュータです。

画像
FIG2は、この実験に使われた装置の全体像を示しています。まず、レーザーの光を「空間光変調器(SLM)」という特殊なスクリーンに通すことで、好きな場所に光の焦点を作り出します。この光の焦点が「光ピンセット」となって原子を捕まえます。レンズや鏡などを通してレーザーの焦点を細かく制御し、たくさんのトラップを平面や立体的に並べられるようにしています。原子がどこにいるかは、蛍光の光を特殊なカメラ(EMCCD)で撮影して観察します。立体的な配列の場合は「電気で焦点を変えられるレンズ(ETL)」を使い、層ごとにピントを合わせることもできます。この全体の流れの中で、AIがリアルタイムで光のパターン(ホログラム)を設計してSLMに送り、原子たちを同時に目的の場所に誘導する仕組みになっています。Credit:AI-Enabled Parallel Assembly of Thousands of Defect-Free Neutral Atom Arrays

まず、カメラで全てのトラップの様子を撮影し、どの場所に原子がいてどこが空席なのかを“地図”のように記録します。