Steinは1970年代にこの構想を提唱し、その後も多くの研究が“橋”を強化してきました。
多重線形制限の端点(最も際どいケース)についても、Guthによる多重線形Kakeya端点や機能解析的双対化の技術と合流させ、溝畑・竹内型の主張が“損失なし”で成立すれば一気に到達できる、という見通しが共有されていました。
つまり、この予想は単なるきれいな不等式に留まらず、「制限問題の要所へ抜ける幹線道路」の役割を期待されていたのです。
ただし、完全な一般形の証明は長らく成し遂げられず、損失付きの部分的な進展が続いてきました。
球対称など特別な場合の成立や、三次元円錐でのR^(1/4+ε)損失、さらにrefined decoupling理論を利用した一般形でのR^((n-1)/(n+1)+ε)損失などが代表例です。
Guthは講演で、一定のデカップリング公理の範囲ではこの損失を取り除くことはできないと示唆しています。
こうした「損失の壁」が存在すること自体が、この予想が幾何学のきわどい境界に関わっていることを示しています。
2025年、ハンナ・Cairoによる反例はこの直感を決定的に裏付けました。
平面でない任意のC²級超曲面に対し、重み関数と曲面上の関数を巧みに選べば、拡張作用素によって生じるエネルギーは直線平均だけでは抑えきれず、その増幅は必ず対数的な因子(log R)を伴うことが構成的に示されたのです。
つまり、直線平均による最大値を使っても、左辺の重み付きL²ノルムがそれを必ず超えてしまうという状況が明示されました。
これが「一般形の溝畑・竹内予想は偽である」という結論であり、同時にStein型の主張も“対数因子なし”では成立しないことを意味します。
ただし、この反例は“対数まで”の破れに留まり、局所版やR^εレベルの弱い損失を認めれば依然成立の余地が残るという重要な含意も持っています。