研究チームは、この「顔らしさの力」が広告やデザインの分野にも使えると考えています。

たとえば、製品のパッケージやキャラクター、車のフロントのデザインなどに顔のような配置を取り入れると、見る人の無意識の注意を引きつけて、より強く印象づける効果が期待できるのです。

このような可能性については、実際の論文の中でも言及されています。

私たちも実際、家電製品が「なんだか可愛い顔」に見えたり、ポスターの大きな目に思わず目がいったりしたことがあるかもしれません。

そうした「顔のように見える物体」がもつ引力をうまく活かせば、人々の注目を集める新しい方法として、社会で広く使えるかもしれません。

とはいえ、本物の「横目」が持つ力もあなどれません。

人の横目には、見るだけで本能的に「何かある」と反応してしまうような強さがあります。

今後の研究では、本物の視線と顔に見える物体の効果を組み合わせて、もっと効果的なデザインやユーザーインタフェースの開発ができるかもしれません。

この研究の成果は、人間の知覚のしくみを理解する手がかりになるだけでなく、私たちが日常の中で感じている「顔に見える不思議な感覚」に、科学的な説明を与えてくれたのです。

次に、壁の模様やコンセントの穴が「こっちを見てる」と感じたときには、あなたの脳がそのとき何をしているのか、ぜひ思い出してみてください。

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元論文

How face-like objects and averted gaze faces orient our attention: The role of global configuration and local features
https://doi.org/10.1177/20416695251352129

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。