現代の英国では、フォニックス(音声法)が初等教育で必修化されています。
フォニックスは既存のアルファベットを使って発音と綴りの対応を教えるため、ITAのような移行問題は起こりません。
では、「ITA」とはいったい何だったのでしょうか。
ITAの歴史は結果的に、教育改革において「シンプルにすれば必ず良くなる」という発想の危うさを教えるものとなりました。
元生徒の一人はこう語ります。
「教育は一度きり。
私たちは実験に参加させられ、説明も選択肢もなかった。
50年経った今も、その影響を感じている」
ITAの物語は、革新的な教育アイデアが必ずしも持続的な成果を生むわけではないこと、そして教育の現場では短期的成果よりも長期的な影響と社会的説明責任が何より重要であることを、半世紀越しに私たちへ警告しているのです。
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参考文献
The radical 1960s schools experiment that created a whole new alphabet – and left thousands of children unable to spell
https://www.theguardian.com/education/2025/jul/06/1960s-schools-experiment-created-new-alphabet-thousands-children-unable-to-spell
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部