そのため社会関係資本とは、何を知っているかではなく、誰をどの程度知っているかがより重要となる。

もちろん本人の人間文化資本を構成する持ち時間、職業の種類、所属階層、運動能力、知的水準、基礎体力、意欲・気力、手持ち情報、情報処理力などに左右されることは当然であり、総じて社会関係資本は座してるだけでは機能し得ない。

成員が相互性を基盤として創りあげる関係の様式

その意味でコミュニティは、成員が相互性を基盤として創りあげる関係の様式を指す。具体的には図3のように表現できる。

図3 関係の様式としてのコミュニティ

「一緒に行う、一緒に働く、一緒にいる」のどれかによりコミュニティへの助走が開始される。それは近隣社会という狭い範囲から都市全体への助走が一般的であるが、もっとも広い意味では世界システムからの助走、たとえば世界的な半導体工場が小さな村に進出することなどからも相互性による新しい関係様式は創りあげられる。

優れたネットワークの構築

なぜそのようなネットワークが世界的に求められるかといえば、広い意味でそれが人間の幸福に直結しているからである。かりに本人にとって意味のある仕事があり、その周囲の人間関係がきちんと創りあげられていて、さらに親密な他者がいれば、関係面での理想モデルになる。

長寿科学での成果と融合

なぜなら、周囲との良好な関係が健康促進の効果をもたらし、優れたネットワークの構築によって人間の寿命が延びるからである。そして社会的な接触を増やすことで健康常識が豊かになることは、長寿科学で証明されてもいる。

「友人や親戚との社会的ネットワークが多岐にわたる人は、社会的に孤立している人に比べて、不安感や抑うつの程度が低く、健康的で、死亡率も低い。・・・・・・社会的なつながりのある人たちは、他者への共感力や信頼感が高く、協力的であることが示されている」(フォンタナ、2020=2022:315)。