人の頭の重さは約5kgと言われており、ボウリングボールとほぼ同じ重さです。この重さ、正しい姿勢で支えられていれば、さほど問題にはなりません。しかし、頭が前に傾くとどうなるでしょうか?
米国の脊椎外科医Kenneth Hansraj博士の2014年の研究によると、頭が前に傾くと約27kgの負荷が首にかかる、ということが明らかになっています。スマホやPCの画面を見るたびに、あなたの首には通常の5倍以上の負担がかかっているというのです。(参考・「Assessment of Stresses in the Cervical Spine Caused by Posture and Position of the Head」Kenneth K. Hansraj Surg Technol Int. 2014)
特にノートPCで作業するときには、無意識に画面を見下ろしてしまう人がほとんどです。この姿勢を日に何時間も続けていると、次第に首や肩の筋肉のバランスが崩れていくのは言うまでもありません。
テックネックがあらゆる不調の引き金になる理由
テックネックになると、具体的にどの筋肉が影響を受けるのでしょうか? 主に負担がかかるのは以下の筋肉です。
僧帽筋(上部線維):肩から首にかけて広がる筋肉で、頭を支えるために常に緊張するため「肩こり」を引き起こしやすいのが特徴です。肩の上部が石のように固くなっていると感じたら、この筋肉からのSOSかもしれません。 肩甲挙筋:肩甲骨から首をつなぐ筋肉で、デスクワーク中は頭が固定されることもあり、特にこわばりやすい部分です。首の付け根から肩にかけての痛みを感じたら、要注意です。 胸鎖乳突筋・斜角筋群:首の前側にある筋肉で、頭を前に出す姿勢をずっと続けると、ゴムが伸びきったように過緊張状態になります。頭痛やめまいの原因になることもあるので要注意です。 頚椎深層屈筋群:首の奥深くにある隠れた筋肉です。姿勢を維持するために重要ですが、崩れた姿勢ではうまく働かず、弱くなるほど表層の筋肉に負担が増えるという悪循環を生みます。
これを見て分かるように、この不調は首だけの問題ではありません。姿勢の崩れ方には個人によって様々なので一概には言えませんが、少なくともデスクワークでの首の前傾は猫背を招き、猫背は骨盤の傾きを変え、全身の姿勢を崩していきます。