J1では2019シーズンからVARが導入されており、主にゴール、オフサイド、ペナルティエリア内の事象、レッドカードの判定などで使用される。しかし、VARがあっても誤審が完全になくならない理由は、運用の複雑さと人的判断の限界にある。
4月9日のJ1第5節、川崎フロンターレ対横浜F・マリノス(Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu/3-3)の試合では、川崎の得点に関わるプレーにおいてVARが介入し、オンフィールドレビュー(OFR)が行われた。主審は一度はPKを示したが、その後のレビューでオフサイドが確認され、最終的に横浜FMの間接FKで再開された。この判定については、JFA(日本サッカー協会)のレフェリーブリーフィングで説明が行われ、「オフサイドポジションにいた川崎の選手(小林悠)がプレーに影響を与えたとは言えず、PK再開が妥当だった」との見解が示された。
このように、VARが映像を通じて客観的な材料を提供しても、最終的な判断は主審に委ねられる。VARが誤った情報を提供したわけではなく、その解釈や運用の中で、見落としや誤解が生じるリスクが常に存在する。
また、冒頭の7月20日の横浜FMのケースでは、審判団とVARチームのコミュニケーションや、映像の角度、プレーの解釈に差があったことが、結果的に混乱を生んだ。VARはあくまでも技術的な補助であり、最終的な判定は主審の判断に委ねられるため、主観的な要素が完全に排除されるわけではない。

VARの技術的制約と運用上のルール
VARの精度は、カメラの配置や映像の質に大きく依存する。プレミアリーグやラ・リーガでは、30台以上の高精度カメラや高フレームレート映像、さらには半自動オフサイド判定技術(SAOT)が導入されており、広範囲かつ高精度な映像確認が可能だ。