確かに直接の交流は人々をつなぐこともできますが、同時に違いを際立たせてかえって不快感や緊張を生む場合もあるのです。
現に、人々は想像以上に自分と異なる社会階層の他者との交流を避けており、たとえ交流が生じてもあまり親密さやつながりを感じられていないという研究報告があります。
特に自分自身が社会階層で下位にあると感じている人ほど、階層の異なる相手との接触に尻込みしがちな傾向も報告されています。
こうした背景を踏まえ、本研究では「初対面同士で、しかもお互いの社会階層をさりげなく認識した状況なら、人々の交流はどうなるのか?」という疑問が探られました。
社会階層によって、人は初めて会う相手への注意の向け方や振る舞い方が変わるのか。
そして会話を終えたとき、相手への感じ方(好感度)は階層の違いによって左右されるのか――。
特に研究チームは、一対一でリラックスした状況を作った場合、社会階層の違いが交流の質にどのような影響を及ぼすかを検証しました。
特に、「似た者同士効果」によって、同じ階層の人同士の交流のほうが好まれるのか、それとも階層の異なる相手とも同様に好ましい交流が成立するのかを確かめることを目的としました。
果たして人間関係は社会階層を容易に飛び越えられたのでしょうか?
隠せない心臓の動きと社会階層の関係

人間関係は社会階層を容易に飛び越えられるのか?
研究チームは、米サンフランシスコ都市圏で募集した成人男女264名(132ペア)を社会階層に関する事前調査によってグループ分けし、年齢・性別・人種が似た者同士で2人1組のペアを作りました。
ただし、実験途中の機器トラブルや参加者の離脱により2ペアが脱落し、最終的に130組(260名)で分析を行いました。
ペアのうち、48組(約37%)は似たような階層どうしのペア(高×高や低×低)、82組(約63%)は違う階層の人どうしのペア(高×低)でした。どちらのペアも、初めて会う相手どうしです。