今回は、裏金問題などにお灸を据える要素があり、次回以降はまた自民党に票が戻るという見方や、また、「野党が盛り上がって(時に政権奪取までして)、国民の失望を招いて、結局は自民党となる歴史」の繰り返しから(※日本新党、民主党、維新ブーム、希望の党ブーム…)、いずれまた自民党に票が戻るという見方も有力である。私も、もちろんそうした見方に異を唱えるつもりはない。
しかし、同時に、大きな変化の胎動も感じている。自民党の敗北(今回の改選議席は52→39で25%減)、それ以上の公明党の敗北(14→8で約43%減)、更には共産党の崩壊のはじまり(7→3で約57%減)などを見ると、組織票を基盤としてきた政党の後退が著しい。つまりは、組織票選挙の終焉が見えて来た、ということである。
自民党は特に、石破総理を引きずり下ろすとか下ろさないとかの前に、この現実に直面して、どのように政党のガバナンスを考えるか(議員や職員の採用や任用、広報PR体制・シンクタンクを含めた内部統治のあり方。要は組織としての経営のあり方)を議論しなければならないはずだが、けじめをとるべきとか、裏金議員が何を言うかとか、薄っぺらい議論しか見えてこないのが気がかりだ。それなくしては(本質的議論なくして)、本来は、石破さんが良いとか他の誰かが良いとかの議論に正解が出ない。次代を担う青年局あたりは、こうしたガバナンスや党の在り方についての緊急提言をまとめるべきであろう。
話を元に戻そう。今回の参院選を通じて、組織票選挙の終わりをもたらしたものは、裏側から言えば投票率のアップである(約52%→約58.5%)。それは期日前投票の一般化や長期化による部分もあるが、大きくは、これまで、自民党が「寝ていてほしい」と本音では願っていた都市の無党派層・浮動層が、国民民主党や参政党などに代表される新たな政党に流れたことが大きい。
相対的に組織票の存在は小さくなる。もちろん、そもそも高齢化等で、これまでの集票マシーンの力が衰えて来ていることも見逃せないが、多党化の中で、各党や各候補者のショート動画などをスマホで見る機会が激増し、無党派層・浮動層が投票に行くことになったことが大きく影響していると考えられる。