個人の好みに合わせて自分だけの「集中プレイリスト」を作るのも良いでしょう。研究チームも論文内で、将来的には個人の特性に応じて理想的な音楽活用法を探る研究が望まれると述べています。

とはいえ今回の研究は、あくまで「本人の自己報告」によるものなので、音楽が本当に成績や作業効率を上げているかまでは明らかになっていません。

しかし、434名という大規模なデータから、ADHDの若者たちが日常的に音楽を「集中を助ける相棒」として活用している実態が示された意義は極めて大きいと言えます。

音楽という身近なツールが注意力に悩む人々を支える「脳のスイッチ」になり得る——そんな可能性にスポットライトを当てた本研究は、教育や臨床の現場にも新しい視点を提供してくれるでしょう。

「音楽を聴きながらの勉強なんて邪道」という先入観は、これから変わっていくかもしれません。静寂かBGMか、人それぞれに“ちょうど良い集中のかたち”を選べる時代が訪れているのです。

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元論文

Listening habits and subjective effects of background music in young adults with and without ADHD
https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1508181

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部