しかし、少なくとも今回の調査からは「ADHDの若者自身は音楽によって集中や気分が改善すると感じている」こと、そして「実際に集中が必要な場面で積極的に音楽を利用している」ことが示されました。
静けさの中でじっと座っているより、好きな音楽で程よく気分をノせた方が彼らにとって効率が良いのかもしれません。
この研究の意味はとても大きいです。
従来、「勉強するときはテレビや音楽を消しなさい」と言われるのが普通でしたが、この常識はすべての人に当てはまるわけではないことが明らかになりました。
特にADHDの傾向がある人にとっては、音楽を上手に活用することで集中力やモチベーションを補うことができる可能性があります。
前述のように、「注意散漫な子に音楽を聴かせて勉強させても良いのか?」という問いに対し、研究チームとして「音楽はADHD傾向の若者にとって注意力や感情の自己調整手段になる可能性があります」と結論づけています。
ただし、音楽が「薬の代わりになる」とまでは言えません。
研究チームは「薬に加えて音楽もうまく活用すれば、ADHDの症状をコントロールする手助けになるだろう」としています。
音楽は手軽に使えて、副作用もなく、誰でも自分に合った方法で取り入れられるところが大きなメリットです。
では、これから先どんな活用法が考えられるのでしょうか?
では今後、具体的にどんな応用が考えられるでしょうか。
まず、教育現場や家庭で、ADHDの子どもや若者が勉強中に適切な音楽を聴くことを許容・推奨する流れが生まれるかもしれません。
実際、どのような音楽が最も効果的かは課題の種類によって異なるため、例えば「読解や暗記には歌詞のない穏やかな曲」「単純作業や運動にはテンポの速い曲」といったガイドラインが考えられます。
論文では、歌詞の有無が課題への影響を及ぼす可能性について指摘されており、具体的な曲選びの推奨については今後の研究課題とされています。