それは、「場面に応じて音楽の種類を使い分けている」ということです。たとえば、
難しい勉強や読書には、歌詞のない落ち着いた音楽
掃除やジョギングなどの作業には、テンポの速い曲や歌詞つきの音楽
というように、うまく音楽を使い分けている人が多くいました。
そして、「音楽を聴くことで集中しやすくなった」「気分がよくなった」と答えた人は、ADHDかどうかに関係なく多数派でした。
つまり、多くの若者にとって音楽は“やる気を出すパートナー”のような存在であり、特にADHDの人たちにとっては、より積極的にそれを活用しているということがわかったのです。
ADHDにはどんな音楽が効く?

では、なぜADHDの人たちは、静かな場所より音楽のある環境のほうが集中しやすいのでしょうか?
今回の研究はアンケート調査で因果関係までは踏み込んでいませんが、ADHDの傾向がある若者たちが、勉強や運動などいろいろな活動の中で、音楽を“集中の手助け”として積極的に使っていることが明らかになりました。
これは、音楽がADHDの人の「脳のスイッチ」として働いている可能性を示しています。
実際、先行研究や神経科学の知見によれば、ADHDのある人は静かな状況に置かれると脳の覚醒レベルが下がりすぎて注意が散漫になりやすい一方、適度な刺激が加わると注意を維持しやすくなることが分かっています。
音楽はまさにその「適度な刺激」を与える手段の一つなのです。
アップテンポで刺激的な音楽を流すと退屈さや眠気を吹き飛ばし、脳内でドーパミンが分泌されてやる気や快感が生まれ、結果として注意力が持続しやすくなると考えられます。
もちろん、音楽を聴けばいつでも集中できるというわけではありません。
曲のタイプ(速い・遅い)、歌詞の有無、音量などによって効果は変わりますし、個人差もあります。