さらに、光を集めるためのたんぱく質(ライトハーベスティングコンプレックス)や、光を感じて反応する「ロドプシン」というたんぱく質の遺伝子もありました。

そのほかにも、水を通す「アクアポリン」、イオンの出入りに関わるチャネル、糖の出入りを助ける輸送体など、さまざまな「便利な道具」がそろっていたのです。

これだけの装備を持つウイルスは、ほとんど例がありません。

研究者たちは、PelV-1がこうした遺伝子をもともとは感染相手のプランクトンから取り入れた可能性があると考えています。

こうした遺伝子が感染した宿主の細胞の動きを変えることで、ウイルスの増殖を助けているのかもしれません。

さらに、PelV-1は感染のときに姿を変える「変身ウイルス」でもありました。

研究チームは、PelV-1が植物プランクトンの細胞に感染するようすを時間を追って観察しました。

すると、ウイルスはまず長いしっぽを使って細胞の表面にピタッとくっついていました。

しかしその後、細胞にしっぽを刺すのではなく、まるごと細胞に取り込まれていったのです。

この動きは「エンドサイトーシス」という、細胞が外のものを飲み込む仕組みに似ているものでした。

もっとおどろいたのは、感染後しばらくたった細胞の中からは、しっぽが付いたウイルスの姿がまったく見えなくなっていたことです。

そのかわり、しっぽのないPelV-1が大量に作られていました。

つまり、ウイルスは感染するときにしっぽを「ポロッと捨ててしまう」ようなのです。

そして、感染し終わったウイルスがまた海の中に放たれると、今度はしっぽがちゃんと生えた姿になっているのです。

まるで「使い捨て変身グッズ」のように、感染のたびにしっぽを付けたり外したりしているのです。

この変身のしくみは、これまでのウイルスではほとんど見られない非常にユニークなものです。

最後に、研究チームはPelV-1とは別に、同じ海水サンプルからもう一種類の巨大ウイルスも見つけました。