「まさか30年前の胚があるとは思わなかった」とリンジーさんは語っています。

凍結技術と解凍の難関、そして「新たな命」の誕生

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冷凍保存されていた受精卵/ Credit: MIT – Exclusive: A record-breaking baby has been born from an embryo that’s over 30 years old(2025)

今回の胚は1994年当時の「スローフリーズ法」によって保存されていました。

これは現代の主流である「ガラス化(ビトリフィケーション)」と違い、凍結に時間がかかるぶん、内部に氷の結晶ができやすく、細胞を傷つけるリスクがあります。

さらに使用された保存容器も現在とは異なり、厚みのあるプラスチック製のバイアルに密閉されていたため、解凍には特別な技術と装備が必要でした。

処置を行ったのは、テネシー州ノックスビルにある「リジョイス・フェルティリティ」というクリニック。

ここでは、古い胚の扱いにも慣れた胚培養士たちが対応にあたりました。

ラボ責任者のサラ・アトキンソンさんは、専用ナイフやピンセットを用いながら、液体窒素内で保存容器を慎重に開封。

過去にはガラス製バイアルが破裂し、顔を切るという事故も経験したといいます。

それでも今回は3つの胚すべてが無事に解凍され、リンジーさんの子宮に2つが移植されました。

そのうち1つが無事に着床し、胎児へと成長。

そして2025年7月26日、「30年の時を超えた命」がこの世に誕生したのです。

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新たに生まれたセディアスちゃん/ Credit: MIT – Exclusive: A record-breaking baby has been born from an embryo that’s over 30 years old(2025)

提供者のリンダさんは、赤ちゃんの写真を見てこう言いました。

「娘が赤ちゃんだった頃にそっくりで驚きました。並べて見たら、まさにきょうだいそのものです」