当時の夫との離婚後も胚の保管権を得て、30年間にわたり年間1000ドル近い保管費用を支払い続けたといいます。
ですが、どんどん高齢に差し掛かっていく中で、リンダさんは悩み始めます。
「自分がこの胚を使う可能性はどんどん低くなっていく。廃棄することも、研究目的に提供することもしたくない」
「それは私のDNAであり、すでに生まれた娘のきょうだいなのだから」と。
そんなとき彼女が知ったのが、キリスト教系の団体が提供する「胚の養子縁組」制度でした。
冷凍保存された受精卵の親探し
アメリカでは、長期間保存された胚を受け入れる不妊治療クリニックはごくわずかです。
保存方法が古く、解凍時にうまく着床しないリスクが高いため、多くの医療機関は古い胚の取り扱いを拒否しています。
そのため、リンダさんも多数のクリニックから門前払いを受けました。
ようやく受け入れてくれたのが、カリフォルニア州の「ナイトライト・クリスチャン・アダプションズ」が運営する「スノーフレーク・プログラム」でした。
この団体は、胚を単なる細胞ではなく「潜在的な命」として尊重する立場をとっており、提供者と受け取り手の双方の意向を尊重したマッチングを行っています。
リンダさんは「アメリカに住む、白人でキリスト教徒の既婚カップル」を条件に提示しました。
その結果、受け入れ先として選ばれたのがオハイオ州に住むリンジーさんとティムさんのピアース夫妻だったのです。

夫妻は7年にわたり不妊に悩み、複数の医師の診察を受けていました。
養子縁組を視野に入れて調べていたときに、スノーフレークの存在を知り、「どんな胚でも受け入れる」という条件で登録したといいます。