しかし既存の研究では「安定した円軌道の最内端(ISCO)」から内側に引き込まれてしまった物体が、ブラックホールの滝で落ちていく様子を捉えるのは困難でした。
ブラックホールの滝を観測する
なぜブラックホールの滝を捉えるのが困難なのか?
主な理由は放出される電磁波(光)の弱さにあります。
「安定した円軌道の最内端(ISCO)」や「ブラックホールの滝」から発せられる電磁波(光)は降着円盤の他の部分とくらべると比較的少ないため、遠い地球からは十分なデータが得られなかったからです。
しかし理論上2つの手段がありました。
1つは少ない電磁波(光)でも、検知できる高精度な望遠鏡を用意することです。
2つ目は降着円盤そのものに大量の物体が流れ込んで、検知可能なレベルまで電磁波(光)が増加しているブラックホールを探すことです。
今回の研究では2つ目、すなわち今現在、大量の物体を吸い込んでいるブラックホールを探し出し、観察する方法がとられました。
対象となったのは「MAXI J1820+070」と呼ばれる比較的小型なブラックホールでした。

このブラックホールは近くの恒星から大量の物体を吸い込んでおり、降着円盤は分厚く、さらに高熱で大量の電磁波(光)を発しています。
つまり今現在お食事中のホットなブラックホールというわけです。
研究者はこのブラックホールに対して集中的な観測を行い、得られた電磁波(光)のデータを分析しました。
するとこのブラックホールから得られた電磁波(光)は、通常の回転しているだけの降着円盤から得られるはずがない、余計な電磁波(光)が含まれていると判明。
そこで研究者たちは、この余計な電磁波(光)がどこからやってきたかを、シミュレーションなどを参考にして調べてみました。
すると驚くべきことに、余計な部分の電磁波(光)は「ブラックホールの滝」部分から発せられている場合に、最も一致していることが発見されました。