つまり、「つながりの多い人ほど、初対面の他人からのわずかな否定的なサインに、脳が過敏に反応する傾向」が示されたのです。
この結果は、有名人がSNS上で「フォロワーでもない人からの否定コメント」に心を乱されている現象と重なる部分があります。
しかし、なぜ他人の態度がそんなに気になってしまうのでしょうか?
人気者ほど知らない誰かの一言が、無視できない理由

2つの実験は「仲間外れ」と、まったく接点のない見知らぬ他人の「否定的な表情」というまるで異なる状況に対して、同じ2つの脳領域が反応していました。
これは脳が、異なる2つの状況を“同じ種類の危機”として扱っている可能性を示しています。
特にこの2つの領域の、前帯状皮質(anterior cingulate cortex)は、本来、身体的な痛みに対して「つらい」「耐えがたい」と感じる情動的な反応を司る脳領域であり、島皮質(insula)は、体の内側の状態(心拍の変化や不安、吐き気など)を感知し、「不安だ」などの感情と結びつける役割を担っています。
つまり、これらの脳領域が活動するということは、「社会的な排除」や「否定的な評価」は、単に「心が痛む」というだけでなく、実際に身体を傷つけられたかのような危機感のある感覚であることを意味しています。
人気者ほど、仲間外れにされたときのショックが大きいというのはなんとなくイメージしやすい問題です。
そのため、人気者にとって知らない誰かの否定的な態度は、「人気者なはずの自分が仲間外れにされた」というのと同等のショックとして脳内で処理されている可能性があるのです。
SNSなどの有名人が、ファンでもない通りすがりのアカウントから出た否定的なコメントを無視できない理由もここに起因している可能性があります。
ではこの共通の反応はなぜ起こるのでしょうか?
それは、人間の脳が進化の過程で「社会的なつながりの断絶」を非常に深刻なリスクとして扱うように設計されてきたからだと考えられます。