この村は、人々が日常的に顔を合わせ、誰と誰が仲が良いのかが自然と周囲に伝わるような、密接なコミュニティです。
研究チームはまず、韓国の農村に暮らす人々を対象に、誰が誰とよく交流しているかを調査しました。
その際に用いられたのが「アウトディグリー中心性(outdegree centrality)」という指標です。
これは、他人から「相談相手」や「重要な関係者」として名前を挙げられた回数をもとに、その人がどれだけ多くの人とつながりを持っているかを示す数値で、村のなかで「頼られている度合い」を客観的に表すことができます。
そしてこの社会的つながりの広さが、見知らぬ他人からの「拒絶的サイン」に対して、脳がどう反応するかを調べるために、研究チームは2つの脳画像実験を実施しました。
最初の実験では、「Cyberball」と呼ばれるバーチャルなボール投げゲームを用いました。
参加者は、ゲームの前半では他のプレイヤー(実際にはコンピューター)と順番にボールを投げ合いますが、途中から他の2人だけでボールを回し、参加者を無視するという意図的な仲間はずれの状況が生じます。
このときの脳活動をfMRIで測定したところ、村で多くのつながりを持つ人ほど、仲間外れにされたときに、島皮質(身体感覚や感情のモニタリングに関与)と前帯状皮質(社会的苦痛や不安に関連)が強く反応していることが確認されました。
2つ目の実験では、「見知らぬ他人からの否定的な表情」に対する脳の反応が調べられました。
ここでは、参加者に「見たこともない他人の怒り・嫌悪などのネガティブな表情」の映像を見せ、その際の脳活動をfMRIで測定しました。
この結果、他人から信頼されている人気者の参加者ほど、見知らぬ他人の否定的な表情に対して、島皮質と前帯状皮質が強く反応することがわかったのです。
