では、視床は一体どのような方法で、皮質の感覚ニューロンの感度を調整しているのでしょうか。

論文で述べられている仕組みはかなり複雑なために、ざっくり解説版とじっくり解説版を作りました。

内容をサッと読みたい人はざっくり解説だけ読んで次ページに飛んでください。

ざっくり解説版

では、視床はどのようにして皮質のニューロンの感覚の強さを調節しているのでしょうか。

この疑問に答えるため、研究者たちはマウスを使って、視床と大脳皮質が感覚情報をどのようにやり取りしているのかを調べる実験を行いました。

マウスを用いたのは、人間の皮膚感覚に似た仕組みがマウスの「ヒゲの感覚」にも存在するからです。

研究チームはまず、視床から皮質へとつながる神経を、光を使って自由にオン・オフできる特別な方法で刺激しました。

そして、その刺激が皮質の中のニューロンにどのような影響を与えるかを詳しく観察しました。

その結果わかったのは、視床が皮質のニューロンに信号を送るとき、単純にニューロンを興奮させるのではなく、ニューロンが「刺激を感じやすくなる状態」に切り替わっていたということでした。

つまり、視床がニューロンに向かって、「次にくる感覚をしっかり感じ取りなさい」と伝えるような仕組みがあったのです。

この仕組みが働くと、ニューロンは普段よりも感覚刺激に敏感になります。

興味深いことに、この特別な仕組みはすべてのニューロンに起こるわけではなく、特定の種類のニューロンで主に起こっていることもわかりました。

視床は、このように特定のニューロンに対してだけ「感覚の感度を高める司令」を送り、それ以外のニューロンにはあまり働きかけないような選択を行っていました。

つまり、視床は皮質のニューロンに対して、「感覚を強く感じなさい」「弱く感じなさい」といった司令を送り、感覚の感じ方を微妙に調節する、いわば脳内の「感覚調整ダイヤル」のような役割を持っているのです。

じっくり解説版