まさに「ハイブリッド(雑種)が進化の触媒となり得ることを実証する生きた例」といえるでしょう。

現在、世界では年間約3億7,500万トンものジャガイモが生産されていますが、作物としてのジャガイモは病害虫や乾燥・高温など環境ストレスに弱い一面も持っています。

今回明らかになったジャガイモの祖先のゲノム情報や、親から受け継いだ重要遺伝子の知見は、今後より強靭で優れたジャガイモ品種を作出するための遺伝的基盤として貢献する可能性があります。

そして何より、本研究はかつて人知れず起きた「自然界の偶然の交雑」が、現代の私たちの食卓にもつながる偉大な作物を誕生させていたことを教えてくれます。

長年謎とされた「ジャガイモはどこから来たのか」という問いに対し、科学はついに明快な答えを提示したのです。

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元論文

Ancient hybridization underlies tuberization and radiation of the potato lineage
https://doi.org/10.1016/j.cell.2025.06.034

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部