エコシステムを「動かす」存在へ──他社と何が違うのか?
CIC Tokyoの支援は、単にスタートアップを“育てる”だけにとどまらない。
彼らが目指しているのは、スタートアップと社会実装の担い手(行政・大企業)をつなぐ“触媒”の役割だ。たとえば東京都が推進する「Be Smart Tokyo Project」では、スタートアップと大企業が共同で実証実験を実施。CICがその運営を担っている。
さらに、世界有数のラグジュアリーブランド「ケリング」や、韓国スタートアップセンターなどとの連携も進む。ボストン拠点に設けた「ジャパンデスク」では、グローバルに挑戦する日本企業を現地のネットワークで支援する。
「ただ中だけで完結するのではなく、外とつながる“ハブ”としての価値が、これからの時代は問われると思います」(小林氏)
スタートアップに“孤独”はもういらない──CICのコミュニティ文化
CICでは、起業家の“孤独”に向き合う仕組みも徹底されている。
代表的なものが、入居者主導のコミュニティイベントだ。テーマ別の「お悩み相談会」や、「自販機の空きスペースをどう活用するか?」といったアイデアソンが実際に事業化につながったケースもある。
また、法律・ガバナンス・採用などの課題に対しては、専門家による「オフィスアワー」を設置。必要に応じて契約に進む形で、負担なく相談できる仕組みを整えている。
「みんなで悩みを共有して、アイデアを出し合って、時にチームが生まれる。それが日常的に起きているのがCICの文化です」(小林氏)
次に目指すのは「グローバル×ディープテック×ダイバーシティ」
CICが次に見据えるのは、3つのキーワード──グローバル、ディープテック、そしてダイバーシティ。
現在、入居企業の約20%が海外企業。スタッフもバイリンガル対応で、海外から日本に進出する企業、日本から海外に挑戦する企業、双方にとって「ゲートウェイ」として機能している。
大阪・関西万博では、各国の視察団がCICを訪問し、日本のイノベーションハブとしての注目度も高まっているという。
「日本のスタートアップは、最初からグローバルを前提に事業・チーム設計をすることが成長のカギ。SakanaAIのように、多国籍の研究者と日本の行政出身者が組むことで、両方の視点を持ったチームが生まれます」(小林氏)
加えて、ジェンダーや年齢の多様性を受け入れた支援体制も強化中。ダイバーシティを重視したイベントやネットワーク構築も積極的に展開している。