「世界とつながる拠点」CIC Tokyoの全貌

 東京都港区・虎ノ門ヒルズ内に位置するCIC Tokyoは、約330社のスタートアップや関連プレイヤーが入居する、日本最大級のイノベーションキャンパス。特徴は「物理的なスペース」ではなく、「関係性を紡ぐ仕組み」にある。

 たとえば、年間400件を超えるイベントを開催し、大企業、行政、大学、投資家、海外スタートアップなど多様なプレイヤーとの接点を生み出している。また、事業成長に合わせて柔軟にスペースを拡張できるマンスリー契約制度や、グローバル展開支援の「ジャパンデスク」、実務支援プログラム「CIC Institute」など、ハードとソフトの両面からスタートアップを支えているのが特徴だ。

「CICが目指すのは、起業家が孤立せず、成長の壁を一人で乗り越えずに済む“エコシステム”を形にすることなんです」(CIC Tokyo・コミュニティオペレーションズマネージャー 小林尚生ケイ氏)

なぜ今、IVSに出展したのか?「信頼の交渉市場」で描いた戦略

 CIC TokyoがIVSに出展したのは、自社のPRだけが目的ではない。むしろ、“スタートアップエコシステムを加速させるための拠点”としての存在を、スタートアップと支援者双方に実感してもらう機会だった。

「京都で開催されたIVSは、私たちにとって“同窓会”のような場所にもなっていました。入居企業の方々にたくさんお会いできて、そこで新たなネットワークも広がったんです」(小林氏)

 IVSは、出展には審査や推薦が必要な「信頼されたマーケット」。その場でスタートアップ支援機関として顔を出すことは、CIC自身のプレゼンスを高めるだけでなく、入居企業への信頼性を補完する意味合いもある。

 また、京都・大阪など今後の展開エリアに向けた地ならしとしても意義深い。2025年4月には福岡拠点が始動、今後は大阪・京都への展開も視野に入っている。

「日本最速ユニコーン」も育った、柔軟かつ強固な成長支援

 CICの実力を象徴する事例の一つが、日本で最速でユニコーン企業となったAI企業「SakanaAI」だ。

 創業間もない時期からCICに入居し、成長フェーズに合わせてフロアを増床し続け、現在も拠点として活用している。

「最初はたった3人でしたが、今では大きなチームに成長。CICのマンスリー契約制度を活用して、部屋を段階的に広げていきました。スタッフも彼らの相談役として支援してきました」(小林氏)

 このような柔軟性は、固定契約型オフィスではなかなか実現しない。加えて、CICは定期的な登壇機会やビジネスマッチングの場も提供しており、SakanaAIのようなスタートアップが資金調達や事業提携の機会を得やすい環境を整えている。

 IPOを視野に入れる段階で卒業した企業も多く、アスエネ、TERASS、Unerryなどが代表的な「CIC発」スタートアップとして知られている。