この制度により、家庭や育児と両立しながら安定した雇用とキャリア形成が可能となり、主婦層にとって扶養の壁を気にせず安心して働き続けられる選択肢となります。

・多様な働き方の選択肢提供 短時間正社員制度に加えて、従業員のライフステージに応じた柔軟な働き方の選択肢を用意することが重要です。例えば、フレックスタイム制度、在宅勤務制度、時差出勤制度などを組み合わせることで、従業員が家庭の事情に応じて最適な働き方を選択できる環境を整備しましょう。

また、正社員とパートタイムの間を行き来できる制度や、勤務時間を段階的に調整できる仕組みを導入することで、従業員が人生の各段階で無理なく働き続けられる職場づくりが可能となります。

まとめ

社会保険適用拡大は、多様な働き方の保障強化と将来の安心につながる重要な制度改革です。しかし、主婦層の「扶養から外れたくない」という意識や夫からの心理的圧力、配偶者手当の喪失、税負担の増加など家庭内外の複雑な事情は根深く、放置すれば深刻な人手不足を招く恐れがあります。

50人以下の企業は猶予期間を有効活用し、制度の正しい理解促進、個別相談の充実、柔軟な働き方の導入など多角的な対策を講じることが不可欠です。

パート従業員が年収の壁を気にせず、安心して働き続けられる職場環境づくりこそが、今後の企業競争力を左右する重要な経営課題といえるでしょう。

李 怜香 社会保険労務士・産業カウンセラー・ハラスメント防止コンサルタント 岐阜県生まれ。早稲田大学卒業。1999年、宇都宮市にて李社会保険労務士事務所(現 メンタルサポートろうむ)を開業。2011年、産業カウンセラー登録。2012年、ハラスメント防止コンサルタント認定、(公財)21世紀職業財団ハラスメント防止研修客員講師に就任。2019年、健康経営エキスパートアドバイザー認定(第1期)。 官公庁から大手企業、教育機関まで幅広い分野で研修実績がある、ハラスメント対策のエキスパート。ハラスメント外部相談窓口の相談対応や、事案解決支援の経験を活かした実践的な指導には定評があり、研修受講者からの満足度は90%以上。法的知識とカウンセリングスキルを組み合わせた独自のアプローチで、職場のメンタルヘルスやハラスメント防止の分野で、企業をサポートしている。