経済的に一家の大黒柱でありたいという男性の意識が、妻の就労拡大に対する心理的抵抗として現れることも少なくありません。それを受け、妻の側にも「家庭に波風立ててまで働きたくない」という意識を生んでしまうのです。
事業主が取るべき具体的対策
職場においては、制度上のメリットについて情報提供するのはもちろん、従業員の心理的ハードルにも意識を向け、不安解消の機会を設けるなど、対応を工夫することが求められます。具体的には次のような対策が有効です。
・制度メリットの積極的な情報提供 社会保険加入により将来の年金額が増加し、傷病手当金や出産手当金が受け取れることを具体的な数値で示すことが重要です。
傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けない場合に概ね月給の3分の2が支給され、通算して1年6ヶ月まで受給できます。出産手当金は、出産のため仕事を休んだ期間について同様の給付が受けられます。
社会保険の保険料は事業主との折半であり、国民年金・国民健康保険よりも有利な制度であることを強調しましょう。短期的には社会保険料の支出で手取り額が減少するかもしれませんが、10年、20年という長期的なキャリアを考えると、社会保険に加入して働く時間の上限を作らない方が、収入増・キャリアアップのチャンスが広がります。
・個別相談による不安解消と家庭内理解の促進 扶養から外れた場合の手取り試算や家計への影響を一緒にシミュレーションし、従業員の具体的な不安を解消することが重要です。キャリアコンサルタントやファイナンシャルプランナーによる個別相談の機会を設け、専門的なアドバイスを提供しましょう。
夫婦間のコミュニケーションが課題となる場合は、会社の担当者や専門家を交えた話し合いの場を設けることも検討し、家庭内の理解を深める支援を行うことが必要です。
・短時間正社員制度の導入 短時間正社員制度は、期間の定めのない労働契約を結びながら、フルタイムより短い所定労働時間で働く制度です。パートと異なり雇用期間の定めがなく、正社員と同様の福利厚生や昇給・賞与の対象となります。