「二周目人材」と「強制成長」が生み出す少数精鋭組織
Dress Codeの急成長を支えるのは、江尻氏が「二周目人材」と呼ぶ経験豊富なメンバーたちだ。
「私たちは難しいことをやろうとしているので、一般的な基礎の『き』にあたる部分を確認する作業を省略することが重要です。試行錯誤せずに『この場合は、こうやるよね』と一段階スキップできる人たちが集まっているのが大きいです。そのうえで、みんながやったことがない部分に対して知恵を絞るような人材が集まっているかもしれないなと思っています」
「(市場)探索コストゼロ」で業務を遂行できる彼らは、プロダクト開発から顧客対応まで、あらゆる場面で効率性を追求する。また、江尻氏自身も「この会社もそうですが、ファイナンスも自分でやります。資本政策と資金調達の契約書を、私が全て書いてから弁護士に最終確認をお願いしています。全ての業務を実務的にこなします」と語るように、経営者自らが先頭に立って業務をリードする。
江尻氏は、意図的に「強制環境下における強制成長」の状況を作り出すという。グローバル展開を初期から設定することで、エンジニアは4カ国で通用するデータベースを構築せざるを得ず、CSメンバーも各国の商慣習を考慮したサポート体制を考えるよう促される。
「別に私がすごいという話ではないのです。強制的にその状況になったら、スタートアップに挑んでいる経営者たちは、“強制環境下における強制成長”で結構みんな強くなるのです。その状況に置かないから、みんな甘んじたところまでしか行けないと思うのです。」
江尻氏は、スタートアップが「いかに綺麗に成長していくかとか、小さく成功して終わりという状況で終わってほしくない」と語り、Dress Codeが目指すのは、富士山ではなくヒマラヤのような「一番でかい山」であることを強調する。
「やってみたら、結果的にできます。グローバル展開もできますよ」。 江尻氏のこの言葉は、Dress Codeが描く「統合型SaaS」の未来が、単なる理想ではなく、確かな経験と戦略に裏打ちされた現実であることを示唆している。Dress Codeの挑戦は、日本のSaaS市場、そして世界のWorkforce Management市場に、新たな「摩擦ゼロ」の波を起こすかもしれない。
(文=UNICORN JOURNAL編集部)