顧客を惹きつける「体感的なペイン」と「組み合わせの価値」
Dress Codeは、初期の顧客獲得において、SaaSの分断に課題意識を持つ企業に狙いを定めている。課題意識を持っていない企業へのアプローチについては、「アプローチしません」と言い切る。
「それは今アタックするお客様ではありません。これは全ての事業において言えると思うのですが、最初にコミュニケーションコストが高かったり、課題感を持っていない顧客は捨てるべきだと考えています」
Dress Codeが展開するワークフォースマネジメントプラットフォーム「DRESS CODE」が提供するのは、単なる機能の便利さだけではない。例えば、企業が直面するこんな課題を解決できる。
多くの企業では、IT管理だけでなく、人事労務や総務といった様々な領域でSaaS(クラウドサービス)を活用しているが、これらのサービスがそれぞれ独立しているために、「摩擦」が生じることがある。
具体例を挙げてみよう。SalesforceやSlackのようなツールのアカウント管理は、通常、IT部門が行う。この際、「この従業員はマーケティング職なのでアカウントを持つべき」「営業職かマーケティング職であればアカウントを持っていてもよい」といった、役職や職種に応じたルールを設定し、それに違反している人がいないかリアルタイムで把握し、アラートを出したい。
しかし、このようなアラートを正確に鳴らすためには、従業員の職種や所属といった人事情報が必要不可欠だ。一般的なIT資産管理ツール単体では、HR(人事)関連のデータベースを持っていないため、この情報を参照することができない。
そのため、多くの企業ではHR SaaSに登録されている人事情報を参照しようとする。しかし、管理すべきメンバーは正社員や役員だけではない。業務委託契約者も多数存在するが、HR SaaSには業務委託契約者の情報が含まれていないケースも少なくない。
Dress Codeが提唱する「コンパウンド(混合物)」という考え方は、まさにこの課題を解決するものだ。
「”統合”ではなく”コンパウンド”が意味するのは、『カゴ』のようなものなのです。組み合わせると『今までこれをやりたかったんだよね』と言われるようなものがすごくたくさん詰まっているのでできるのです」
DRESS CODEであれば、HR関連の情報も含めて統合的に管理することで、職種に応じたアカウントルール設定や、ルールに違反するアカウントへのリアルタイムアラートが可能になる。これこそが、従来のシステムでは実現できなかった「組み合わせの価値」であり、顧客が抱える「体感的なペイン」の解消に繋がっている。
例えば、採用予定者の情報とデバイス在庫を自動で紐付け、不足数を把握するといった機能は、従来のシステムでは実現不可能だった。
「例えば、一般的に企業におけるデバイスの管理は、情報システム部で把握しているかもしれませんが、そこには当然HR(人的資源)のデータはありません。DRESS CODEを使用していれば、ATS(採用管理システム)で採用予定者の情報を持っています。
仮に、7月1日に5人入社するとします。デバイス台帳はExcel管理しているが、iPhoneが何台足りないかなどはアナログコミュニケーション(SlackやTeamsなど)でやり取りしないとわかりません。ミスも起きるかもしれません。しかし、DRESS CODEであれば、『採用予定者5人です。デバイス管理のiPhoneは現状2台利用可能です。つまり、3台足りません。』といった情報が自動で出てくるのです。普通のことに見えますが、これすら今はできません。経営者に説明すると、『すごい、これやりたかったやつだ』と大喜びされます」
さらに、「スマホが3台足りない」と分かれば、次は調達したいというニーズが生まれる。 「iPhoneを3台、6月25日までにeSIM入りで、アクティベーションしたらすぐ使える状態にして届けてほしい」という情報を踏まえて、DRESS CODE内のマーケットプレイス内でスマホ等の調達・手配が可能になるという。
こうした「体感的なペイン」の解消と「組み合わせの価値」の提供が、顧客の満足度を高め、導入実績へと繋がっている。「すごい。これがやりたかったやつだ」という顧客の声が、Dress Codeの価値を物語っている。